カテゴリ:
1: 名無しさん@おーぷん
まあ嘘の話なんだけどな
嘘でも良ければ聞いてくれ
img_0

4: 名無しさん@おーぷん
話は俺が地元の小さいスーパーで働き始めたとこから始まる
そこで働き始めた理由ってのがオヤジが脳卒中で倒れて大学に行く金がフイになったからだった
おまけにお袋まで原因不明の強い頭痛を起こすようになり、弟たちがせめて高校卒業するまで俺が大黒柱になってしまった

5: 名無しさん@おーぷん
豆腐の配達すンの?

7: 名無しさん@おーぷん
>>5
惣菜だな正確には

俺の担当になった店舗は本店から一番遠く、山の中にあって小さいが峠を1つ越える必要があった
整備はまあまあされてるほうだが山道はかなりくねってて、半月に1度は車が事故ってひしゃげてるような道だった

8: 名無しさん@おーぷん
本店からその支店(仮に山中店と呼ぶ)までは通常だいたい30分かかる
でも上で書いたとおり、俺は業務時間内に11往復してた
中小企業にありがちな話だが、お偉方が無茶言って配送する品目と物量を増やしちまったせいで当初6往復で事足りるはずだった配送便は臨時で増便され、元に戻らなくなってしまっていた

9: 名無しさん@おーぷん
特に朝の便は時間との戦いになった
街にある本店からの第一便は、通勤ラッシュのど真ん中を掻き分けて朝8時半までに山中支店まで届ける必要があった、でないと開店の8時45分までに商品が売り場に揃わないからだ

10: 名無しさん@おーぷん
イニシャルDというか、無理矢理車線変更とか割り込みとかやないンか?

13: 名無しさん@おーぷん
>>10
山に入った後は空いてるから、そこからは気が狂ったように飛ばしてた

11: 名無しさん@おーぷん
自然と、朝便の時の俺は貧弱な軽の冷蔵車をアクセルベタ踏みで強引に運転するようになった

街を抜けて山に差し掛かってから、下りに入るまでの約3分ちょっとは1度もアクセルを緩めないくらいだった
法定速度なんてもんはその時の俺にはないも同然だった

15: 名無しさん@おーぷん
雪降ると楽しいよな
圧雪路とか100mくらいドリフトしっぱなしとかあるし

16: 名無しさん@おーぷん
具体的には40km規制の山道を常に100km近くで走ってた
今は当然そんな事できる度胸なんかない
配送のノルマに追われて正気をなくしてたと言ったらそのとおりだと思う


一応もっかい言うが嘘だからなこの話

18: 名無しさん@おーぷん
ちょっと言うのが遅れたんだが、俺の勤めてたスーパーには、グリーンマークって名前のいわゆるライバル店があった
そこは元々魚屋で、刺し身に関してはうちよりずっとうまいスーパーだった
そこもたまたま、俺と同じ方向に配送車が走ってた

19: 名無しさん@おーぷん
ある日、俺が配送でガンガンに飛ばしながら山道をかっとんでいくと、カーブ2つぶん前にグリーンマークの配送車が見えた
なんとなく、追い付いてやろうかと思ってエアコンを切ってグリーンマークの配送車を追っていった

21: 名無しさん@おーぷん
ところが、だ
全く距離が縮まらない
むしろズルズル離されていく

俺はちらっとメーターを見た、俺の冷蔵車も80kmは間違いなく越えてた
相手はそれより速かった、カーブ2つの差がが3つになり、そのうちグリーンマークの配送車は見えなくなった

俺は素直にビビった
そりゃ俺も飛ばしてはいたが、さすがに事故ると上限は無意識に設定していた。
相手はその上限を超えて配送してる
信じられなかった

22: 名無しさん@おーぷん
その日以来、俺は配送のたびにグリーンマークの配送車を探した
奴とはなかなかカチ合わなかった、配送時間が微妙にずれていたのかもしれない

山道を全開で登りながら、アレはなにが違ったのかとそればかり考えていた

23: 名無しさん@おーぷん
グリーンマークに置き去りにされてから1週間め
その日は朝っぱらから惣菜作業場のグリルがぶっ壊れ、門外漢の俺まで駆り出して半べそでコンロで焼鳥を焼き、本店を出発したのは8時15分を過ぎてからだった

まず間に合わない、それは分かっていた
それでも山中支店のパートさんの焦った金切り声で電話を受け、さっき焼いた焼鳥がお客様の客注だと知った

間に合わせない訳にいかない
俺はキリキリしながら通勤ラッシュの街を抜け出し、山に入ると同時にアクセルを床まで踏み込んだ

27: 名無しさん@おーぷん
660ccしかない非力なエンジンが危険な音を立てた
エンジンブローの文字が頭を過った、それでもアクセルを緩めなかったのは間に合わせるという狂気じみた決意からだった

ふと、前方、カーブ2つ前
グリーンマークの配送車が見えた

28: 名無しさん@おーぷん
頭の中は案外に冷静だったように思う
ベタ踏みのままカーブを曲がった。
勤め始めて3日めで気がついたアウトインアウトを車線の最大限まで使った。惣菜を片寄らせたら意味がないからだ

カーブを2つ、3つクリアしていく
まだグリーンマークは見えていた

30: 名無しさん@おーぷん
やはり奴は速かった
カーブの失速がない、どうしてもじわりと離される
幽霊だと言われたらそんな気もした

山登りを終わって、下り、80メートルの直線
俺はそのままアクセルを踏みしめた、あっという間にメーターが140目掛けて降りきれていく

グリーンマークの姿が大きくなる
そのとき初めて、奴との距離が詰まった

31: 名無しさん@おーぷん
下りのカーブ、離されないよう食らいつく
それでも速度に負けて僅かずつ、カーブのたびに俺の冷蔵車が外側へ膨らんだ

そしてまたしても、グリーンマークは俺を置いて駆け抜けていった

32: 名無しさん@おーぷん
8時35分、往路最速記録を叩き出した俺はそれでもどこか空虚な気持ちで山中支店の品出しを手伝い、本店への帰路についた

右足が妙に痺れていて、アクセルが踏めなかった

あれ以来、グリーンマークの配送車を追いかけたことはない
今日も奴は、冗談のように山道をビュンビュン走っているのかもしれない

33: 名無しさん@おーぷん
おわり